【短編】シャーペン
「それ俺が前にあげたシャーペン?」
この声は・・・しまった!
考え込み過ぎて、波留が自分の席に座ったことに気づかなかった。
私は、シャーペンを急いで筆箱の中に突っ込んだ。
「何で隠すんだよ」
波留は笑顔でちゃかすように言って来た。
それでも私は動揺を隠すために思ってもいないことを言ってしまった。
「こ、このシャーペン波留のだったんだ… 誰に貰ったか忘れててさ。スッキリしたー…」
そう言って私は波留の顔を見た。
波留の顔はどこか寂しそうだった。
ねぇ、波留・・・
そんな顔されたら期待しちゃうよ?
私もそんなに鈍感じゃないから・・・
「茜って鈍感なんだな…」
キンコンカンコン…
波留がそう言った瞬間にチャイムが鳴って、波留は私から目を逸らすと先生の話に耳を傾けていた。