初恋は君にだけ。
「紗実ったら、いつまで寝ぼけてんのよ」
高校登校初日、まだ慣れない登下校の道を歩いていると、親友の友紀が言った。
しかも呆れ気味にボソッと。
「寝ぼけてなんかないっ」
あたしは精一杯に拒否した。
ただボーッとしてるだけ……だって昨日眠れなかったんだもん。
―中野紗実―
今日から高校生になるあたしだけど…一つ問題があるんです。
「まさか翔太君の事でドキドキしてんの?」
まるで心を見抜かれたような発言をされて、無意識に反応してしまった。
翔太君……
その名前には無表情になれって言われてもなれないよ。