見て見ぬふり。
確か、昨日もあった。

教室に入ろうと廊下を歩いていた時。

見かけたあの姿。

手を差し伸ばそうとしたけど――

やっぱりやめた。

弱くて、ごめんね。

なんども思った。

なんども後悔した。






――

周りに変な風に思われたくなかったの。

自分を守りたかったの。

たったこれだけの理由で、見捨てた。

ごめん、あきれるよね。

この理由だけで人間としてあたりまえ

な事が出来ないなんて。

いや、

これを言い訳にしてやろうとしてないん

だ。あたし。

そうだよ、絶対そう。

―誰にも手をさし伸ばされない

向こうは、なんて思ってるだろう?

――悲しいに決まってるよね。

ごめん、ごめん、ごめんね――






――強くなりたい。

強くなりたいよ。

あの人みたいに―――





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