勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
三成の行動の意味がわからないまま指された襖に目を向けるとくすくすと笑い声が聞こえた。
「紫衣は騙せても俺を出し抜くことは出来ない。」
どこか笑いを含んだ三成の明るい声にその人物は笑うのをやめて襖をそっと開いた。
「あれ?」
部屋に入ってきたのは椿さん?
ゆきさんと一緒に水口に帰ったはずの椿さんがニッコリと笑って部屋の入り口に座った。
「どうして?」
「姫様をいつものように驚かせるつもりでしたが、殿には適いませんね。」
「そうじゃなくて、帰らなかったの?」
「はい、急に予定が変わりましたので途中で引き返してきました。」
「ゆきさんは?」
「ゆき様はお迎えに来られた正澄様の使者の方とお帰りになりましたよ。」
「兄上もゆきがなかなか戻らないから痺れを切らしたのであろう。」
三成が微笑みを浮かべて会話に入ってきた。
そして椿さんに何やら耳打ちをしている。
コソコソと話す二人はとても仲が良く、笑みを浮かべて頷く椿さんに軽く嫉妬心が芽生えた。
男の人ってわかってるけど椿さんはとっても綺麗だし…。
椿さんだけじゃなく、三成の側にいる人はみんなとても綺麗だよね。
私はいつも軽くコンプレックスを感じるんだ。
二人を見るのが嫌でもう一度花饅頭に手を伸ばすと今度はニッコリ笑顔の椿さんに手を取られて掌の上に薬であろう小さな包みをのせられて、
「甘いお菓子の前に薬を飲んで下さいね。」
優しいけどキッパリと告げられた。
「薬…ね。薬――…。」