勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「では、失礼いたします。」
椿さんは薬を飲んだ私にニッコリと微笑むと花饅頭を食べる前に部屋から出ようとして深く頭を下げた。
椿さんは薬の為だけに部屋に来たの?
そんなの申し訳ないよね?
だから私は部屋から出ようとする椿さんを引き止めるために、
「待って!椿さん。」
素早く立ち上がり、彼のそばに行って着物の裾を掴んだ。
「ひっ…姫様!」
だけど勢いがつきすぎた私の体は着物の裾を掴んだまま前のめりになり、椿さんに抱きつかんとばかりに倒れ込み、
「危ない!」
背中から大きな三成の声が聞こえた瞬間に着物の襟を掴まれて引き寄せられた。
背中には三成の体温。
だけど私の体は彼に抱きしめられるのではなく、猫がつまみ上げられるような状態で襟首を摘まれたままもたれ掛かっていて手には破れた椿さんの着物の袖をシッカリと握りしめていた。
「えっと…――。
なんか、――…ごめんなさい。」
大変な事をしてしまったと涙目になりながら謝ると同時に聞こえてきたのは目の前の椿さんの噴き出すような笑い声と背中から三成の笑い声。
「そそっかしい奴だな。」
背中からギュッと抱きしめられて耳元で囁くように三成の声が掛けられた。
「でも、そんな姫様が可愛くて仕方ないと顔に書いてあります。」
くすくすと笑いながら椿さんも三成に話しかけた。
私は自分の失態に加えて三成に抱きしめられていることと椿さんの言葉に恥ずかしすぎて顔を真っ赤にして俯くしかなかった。