勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
彼の着物をギュッと掴んだ私に彼は微笑みながらもう一度抱きしめてくれた。
「どうしたのだ?」
離れたくないからに決まってる。
なのにそれを口にするように促しているのだろう。
三成の意地悪な一面。
だけどそんな意地悪も私には甘い。
「もっとあなたのぬくもりを感じたい。」
スルリと出てくる素直な言葉。
「いい子だ。」
三成は私を目を細めて見つめてから頭をゆっくりと撫でてくれる。
そして私を引き寄せ、腕の中に閉じ込めてから耳に彼の唇が触れた。
それだけで私の唇からは甘い息が漏れる。
そのまま彼と一緒に過ごせるかと高鳴る胸。
だけど彼の唇を割って出てきたのは、宴の話だった。
「紅葉と桔梗から聞いた。」
彼の言葉を聞いて私がお客様の持成しをするしないで話をしたことを言いたいのだと察しの付いた私はビクッと肩を揺らした。
「紫衣は何もせずに俺のそばに座っていればよい。」
紅葉さんたちに言われた言葉と同じ言葉を三成の唇は紡いだ。
「はい。」
私は従うしかなく、不満や不安を漏らすことなく小さく返事をしただけだった。
そんな私を三成は抱き寄せて体をピッタリと密着させると、ゆるゆると背中を撫でてくれる。
「紫衣が何も出来ないと言っているのではないのだよ。」
これも紅葉さんたちと同じ。
その先の言葉を聞きたくて私は三成に尋ねた。
「では、なぜ何もしてはいけないのですか?」
嫉妬するからだと...言って...。
そんな願いを込めて聞いた言葉は、アッサリと三成に切られてしまった。
「もうよい、寝なければ明日も早い。」
私を腕の中から開放して布団に寝るように促す三成。
どうして?
なぜ何も応えてくれないの?
「まだ眠くはありません。三成様はどうぞお部屋に行ってお休みください。」
ちょっぴりのガッカリとフツフツとした怒りに口調はとてもツンケンしたものになってしまった。
「では、部屋で休むとしよう。」
なのに三成は私のその言葉もサラリと流して立ち上がってしまった。