勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
ボソボソと人の話す声で目が覚めた私は自分の姿にまずは驚いた。
そうだ、三成と...。
そのまま寝てしまった私の体は生まれたまんまの姿で、慌てて着物を身に付けた。
声は襖の向こうから聞こえる。
三成と誰?
三成はもしかして部屋に戻ったの?
そんなことないよね?
まだ夜は開けていない。
三成と二人で過ごすこの部屋に訪れる人はいない。
夜は特に気を使ってくれているのか二人でいるときは誰もこの部屋には近づかない。
それなのに部屋の前で話し声が聞こえるなんて、何かあったのかもしれない。
不安に思うのに声を掛けづらくて息を殺して、でも耳はすまして会話の内容を聞こうと努力した。
だけど小さく呟くような声は私には届かない。
布団の中に入ることもできずにじっと座ったまま襖の向こうに神経を研ぎ澄ませる。
「起きたのか?」
だけどしばらくすると、襖が開いて月明かりに照らされた三成の姿が襖の間から見えた。
「何かあったのですか?」
三成がまだ部屋にいてくれたことにホッとすると同時にやはり誰と話していたのか、何を話していたのか気になって仕方ない。
「誰と話していたのですか?」
眉をハの字に下げて困ったような表情を浮かべる三成に不安は募るばかりで、矢継ぎ早に質問を繰り返してしまう。
「紫衣が気にするようなことではない。」
ぶっきらぼうに答える三成。
視線は私に向けられていない。
「嘘です!」
「嘘ではない!」
「では話の内容を教えてください。そうでなければ納得できません。」
どうしてこんなに強く言えたのかとても不思議だったけど、絶対に誤魔化されたりなんかしないんだからと私は鼻息を荒くして三成に詰め寄った。
そして三成の声を聞いて、知らなくていいこともあるんだとすぐに後悔したんだ。