勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「いっつもお母さん、ブツブツ言いながらもテレビの主電源切らなかったからね。」
「泊まりになる予定なのにおじさんのこだわりは生きてたわけだ。」
「ソファーの定位置に座ったままリモコンでテレビを操作するのがお父さんの日常スタイルだったから…」
「私達が家を出ても何も変わらないんだね。」
しみじみと話す芽衣ちゃんに私もこくりと頷いて応えた。
そして、いつものお父さんの定位置に座ってテレビの画面を見ていると、ほんの少し気持ちが和らいだ。
外にいる佐和さんが気にならない訳じゃない。
良君の存在も、恐怖心も消えた訳じゃない。
だけど、リビングの中の両親の存在を感じてほんの少し落ち着いた心で私なりに良君の存在を受け入れる事が出来た。
「芽衣ちゃん…」
「ん?」
だからあえて口にした。
「私、紫衣とお兄ちゃんを守りたい。」
歴史は変えちゃいけないって迷いないわけじゃないけど、2人の幸せを守りたいという気持ちに変わりはなかった。
「わかってるよ。
だから、旅行を計画したんだよ。」
「歴史、変わっちゃうかな…。」
「わからないけど…
変わっても、私達は変わらないよ。」
「変わらない?」
「私は嶋田さんを放さないもん。
あんなに素敵な人にはこの先も巡り会えないでしょ?
もったいないじゃない。」
紫衣もでしょ?って芽衣ちゃんに言われて私も笑顔で頷いた。
「それに、私達4人は何があっても一緒にいられるって思えるの。」
確かに、以前池で見たお兄ちゃんのそばに仕えていた人が嶋田さんや芽衣ちゃんにそっくりで驚いた。
時代は繋がっている。
人もまた繋がっていると感じたんだ。
「ずっと一緒?」
「そうだよ。」
「これからもずっと?」
「ずっとだよ。」
問い掛ける私の肩を抱き寄せながら芽衣ちゃんはひとつひとつ言葉を返してくれる。
恐怖心よりも希望が心の中で大きくなった。