勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
佐和さんは外で良君と話をした内容について何も言わなかった。
それどころか良君がここに来たこともなかったかのように振る舞った。
「お母さんに空気の入れ替えをするように言われたんだろ?」
私の手を握ってリビングから出ようとする。
「嶋田と芽衣ちゃんは一階を頼むな。」
リビングの扉の前で振り返り声を掛けて私の手を引きながらリビングから階段に続く廊下を歩く。
「紫衣の部屋は二階?」
階段の前で私の顔をのぞき込むようにして尋ねる佐和さん。
「うん。」
私は頷きながら返事をした。
階段を上がりながら、まず一つ目の窓、階段の途中にある小さな窓を開け放った。
リビングは芽衣ちゃんがすぐにエアコンを入れたから暑くなかったけど、二階に上がるとむんむんとした空気がこもっていて息苦しいほどだった。
二階には部屋が三部屋あって、一番奥に私の部屋がある。
手前の部屋から順番に窓を開けていく。
「紫衣の部屋はここ?」
淡々と窓開けの作業を進める佐和さんと一緒に廊下の突き当たりの私の部屋の前で佐和さんに尋ねられて、ドアノブを持つ手が緊張で急に震えだした。
それまでは窓開けを作業と受け止めていたのに、それが私の部屋だと思うと、なんだか恥ずかしい気持ちになってドアを開けることが出来なくなった。
「どうした?」
不思議そうに私をのぞき込む佐和さん。
「なんだか急に緊張しちゃって…」
私は佐和さんに正直に気持ちを打ち明けた。