勝利の女神になりたいのッ!~第2部~

くすくすと笑う佐和さん。


笑われると余計に恥ずかしさが増してくる。


意識しすぎだってわかっていても、自分が使っていた部屋に佐和さんを招き入れる事が恥ずかしい。


「紫衣が少しの間暮らした部屋なんだろ?」


俯く私を背中からギュッと抱きしめて佐和さんが言葉を落とす。


こくりと頷けば、佐和さんの腕に力がこもった。

「ここは、紫衣が不安や寂しさを1人で抱えて過ごした場所なんだろ?
今は1人じゃないと、その思い出を今日塗り替えような。」


私が戸惑うのは紫衣と入れ替わり、生活や習慣に慣れない私が寂しさと戦ってきた思い出があるからだって思ってくれている優しい佐和さんの言葉に私は心がほんのりとあたたかくなるのを感じた。


確かに部屋で過ごした思い出より水瓶に映る紫衣の生活を覗き見ていた記憶が多く残っている。


自分が部屋で過ごしていた記憶はほとんど残っていない。


外での生活が必死すぎて、部屋の中ではぐったりとベッドで過ごすことが多かったように思う。


「三成の、お兄ちゃんの本がたくさんあるんだよ。」


私は佐和さんの腕にソッと触れてから言葉を掛けて、ドアノブを回した。

ドアを開けて、電気をつければ部屋は出て行ったまま何も変わっていない様子を見ることが出来た。


「女の子の部屋って感じだな。」


ピンクのカーテンを開けて窓もついでに開けた。

ぬるい夏の風が部屋の中に入ってくるのを確認して、開けたカーテンを閉めた。


「ここで勉強した?」


机を指差しながら佐和さんが椅子に腰をおろす。

「ずっと本を読んでたの。」


私にとっては未来が書かれた歴史の書籍。


お兄ちゃんの歴史を本を読んで勉強した。


「それと、電車の乗り方や携帯電話の操作の仕方を勉強してたよ。」


ニッコリ笑ってベッドに座る私を佐和さんはとても優しい眼差しで見つめる。


「1人でよく頑張ったな。」


椅子から立ち上がり、佐和さんは私の横に座ると肩を抱き寄せて頭をよしよしと撫でてくれる。







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