勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「だけどね、この部屋で一番お世話になったのはベッドなんだよ。
疲れちゃってぐったりとベッドに寝てる時間が一番長かったの。」
「そっか。」
くすくすと笑う私。
佐和さんもニコリと微笑んでくれた。
ここでの暮らしが辛かったなんて思えない。
不安だったし、寂しかったけど私は守られていたんだ。
お父さんやお母さんの愛情を知った今、ここで暮らした時間はとても幸せだったって思える。
「紫衣の部屋に来れて良かった。」
「どうして?」
「三成に負けねぇって改めて思えたから。」
「え?」
「二人の紫衣をこんなにも惹きつける三成に俺も男として負けられないだろ?」
真面目な顔して話す佐和さん。
だけどキョトンとしたまま首を傾げる私の頭をグリグリと撫でながら
「ちょっとした冗談だよ。
羨ましいのは本音だけどな。」
クククと喉を鳴らすように笑って茶化す口調で言葉を落とした。
「三成の野郎はモテモテじゃねぇか…。
紫衣は俺のもんだけどな。」
そう言って私をギュッと抱きしめる佐和さんの腕のぬくもりに私は心から安心できた。
「で?
紫衣ちゃんを抱きしめて俺らの存在をすっかり忘れてるお前はどうなんだ?」
開け放たれたドアから嶋田さんの声が響いて私達は2人ベッドから立ち上がった。
「お熱いことで。」
茶化すような嶋田さんの言葉に佐和さんは眉を寄せてため息を吐き出す。
「邪魔者がいたのをすっかり忘れてた。」
「邪魔者とは心外だな。」
「で?お茶の準備はすんだのか?」
「だから呼びにきたんだろ。」
「空気よめよ!」
言い争う2人の声をかき消すように階段の下から芽衣ちゃんの声が響いた。
「後10秒で下りてこなきゃバームクーヘンは全部私の胃の中に入れちゃうからね―!!」