勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「そりゃ大変だ。
紫衣の為のバームクーヘンがなくなっちまう!」
大袈裟なリアクションで言葉を落とす佐和さん。
「俺の分まで?」
嶋田さんも演技かかった様子で驚きながら階段下の芽衣ちゃんに言葉を返しながら踵を返す。
だから私も、
「私のバームクーヘン食べちゃダメー!」
大袈裟に叫び声をあげて佐和さんの手を取った。
私が落ち込んでると思ってみんなが明るく振る舞ってくれているのに乗っかろうと思った。
不安や恐怖はなくならないけど、私を…お兄ちゃんを、紫衣を守ろうとしてくれる佐和さん達がいるから大丈夫!
「佐和さん!バームクーヘンがなくなっちゃいます!」
「出遅れる訳にはいかないな!」
きっと演技かかった私を佐和さんも気付いてるはず。
だけど私に合わせてくれる。
楽しまなきゃ!
そんな風に思わせてくれるみんなに感謝しながら佐和さんと一緒に階段を駆け下りた。
「ギリギリセーフって事にしてあげる。」
階段を勢いよく下りた私を見て、芽衣ちゃんはニッコリと笑ってリビングのドアを開けた。
涼しい空気がリビングから流れてくる。
「先に食っちまうぞ。」
フォークを片手にニヤリと笑う嶋田さんに迎えられ、私達も席についた。
テーブルの上にはグラスに入ったアイスティーとアイスコーヒー、それに佐和さんが買ってくれたバームクーヘンが綺麗に切り分けられてお皿にのせられていた。