勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
バームクーヘンを食べながら他愛もない話をしていると、
「さて、私達もそろそろ家に帰らなきゃね。」
使った食器をキッチンに運んだ芽衣ちゃんが嶋田さんに声を掛けた。
「そうだな。芽衣の家も空気を入れ替えるように言われてたっけ?」
「換気はもぅいいわよ。それよりも嶋田さんの使う布団が心配なのよ。干せてないし、きっと押入の中でむんむんしてるに違いないもの。」
「そんな事なら気にする必要はないんじゃね?」
「どうして?」
「芽衣の部屋にベッドはあるんだろ?」
「あるけど…。」
「なら俺もベッドで寝るし。」
「けど、私のベッドってシングルだよ?」
「密着させて頂きます。」
「バカね。」
2人の会話はポンポンと軽快なリズムがあって私と佐和さんはそんな2人を微笑ましく眺めていた。
だけど私達も芽衣ちゃん達と同じで、私のベッドもシングルで2人で寝るには狭すぎる。
布団を敷くにしても押入でむんむんしているのは同じで、先に押し入れから出して、エアコンのきいた部屋で広げておくべきだったと後悔した。
「紫衣、食器の片付けお願いしてもいい?」
私が考えを巡らせている間にスッカリ帰る準備を整え、バックを片手に芽衣ちゃんがキッチンの私に声を掛けた。
お茶の準備をしてくれた芽衣ちゃんに片付けまでさせる気なんてさらさらなかった私はキッチンで洗い物に取りかかろうとしている状態だった。
「うん、準備ありがとう。」
泡立てたスポンジを慌てて置いて、手を水道で洗って見送りをする準備を整える。
帰るとは言っていたけど芽衣ちゃん達の素早い行動にほんの少しビックリしていた。
タオルで手の水分を拭っている私の横にピッタリと張り付くように寄り添う芽衣ちゃん。
「今夜、紫衣は石野さんに大人にされるんだね。」