勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
考えることに夢中になりすぎて、佐和さんがキッチンに移動してきたことに気がつかなかった。
だから背後に佐和さんの気配を感じることなく私の手元に急に伸びてきた佐和さんの手に驚いた。
びくりと肩が跳ね上がった瞬間にギュッと掴まれた手。
「布巾が溺れそうだ。」
そんな風に言ってから私の手の中の布巾を手に取ってジャブジャブと洗ってから絞った。
大きくて骨ばった佐和さんの手に絞られる布巾をジッと見つめていると次に水道が止められ、ハッと我にかえる。
布巾をシンクの上に置いた手はタオルに移動して手についた水分を拭き取った後、私の肩に置かれた。
その行動に私の体はやはり驚いたように跳ね上がり、同時に背中から佐和さんのくすくすという笑い声が聞こえた。
「さっきまで芽衣ちゃんとメールしてた。」
落ち着いた口調の佐和さんの声。
だけどメールの相手が芽衣ちゃん?
それって…。
「帰り際の紫衣と芽衣ちゃんのやり取りをバッチリ聞かされたよ。」
やっぱりな内容で、
「今、紫衣が何を考えていて行動が上の空なのかあててやろうか?」
この上なく恥ずかしい指摘を受けてしまった。
だから私は言葉を発することも出来なくて、ただ首を横にぶんぶんと振り続けた。
そして同時に芽衣ちゃんに恨めしい感情を抱いた。
「上の空になるくらい夢中で考えてくれてるってことは、今は準備中なのかな?」
優しかった佐和さんの口調がちょっぴり意地悪な変化をしている。
「まずはやっぱりお風呂から?
当然一緒だよな?
お互い体の隅々まで洗い流した後湯船に浸かって、それからどうする?」
尋ねられる内容は私がおさらいをしていた内容で、やっぱり一緒に入るんだって驚きと彼の質問に私が答えを聞きたくて振り向けば、
「やっぱり変なこと考えてただろ。」
そう言って佐和さんは優しく微笑んだ。