勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
体の準備より心の準備が必要な私は彼の言葉に俯き何も応えることは出来なかった。
そして、ほんの少し落ち着いていた心がまたもや忙しく波打ち始め、頭の中にはごにょごにょ講座が浮かび上がってきた。
だけど、そんな私の状態を打ち消すのは佐和さんのくすくすという笑い声で、
「またモヤモヤ考えてるの?」
そう言って頬に軽く口づけを落とす佐和さん。
またからかわれたんだと佐和さんの言葉で悟ることが出来た。
いちいちドキドキしてしまう自分が情けなくって、だけどそんな私を楽しんでいる佐和さん。
それに最後はキチンと私に解るように説明してくれる誠実な佐和さん。
「体の準備って、シャワーを浴びて寝る準備を整えようかって事だよ。
それに今日、紫衣が大人になるなんてことはないよ。
色んな事があったんだ。精神的に疲れてる紫衣をまだ疲れさせるようなことはしない。
ちょっとからかっただけだよ。
今夜はもうシャワーを浴びたらゆっくり睡眠の為に布団に入ろうな。」
私の頭をグリグリと少し乱暴に撫でながら話してくれる佐和さん。
そのまま彼に促されるようにして階段を下りて、リビングのソファーに座った。
シャワーは佐和さんに先に浴びてもらうことにした。
佐和さんが話してくれた内容は私をホッとさせてくれたけど、それで本当にいいのかゆっくり考えたかったんだ。
今日、私達は2人きりで過ごす。
2人で過ごす夜は初めてじゃない。
だけど、今日は少し特別な気持ちだった。
佐和さんはちがうのかな?
私だけが意識してたのかな?
いつもと同じように口づけをして寄り添って眠るだけでいいのかな?
ぐるぐると考えを巡らせた。
そして、その考えを打ち消すように携帯が鳴った。
「芽衣ちゃんからだ…。」
テーブルの上に置かれた携帯。
開くとたった一言だけ文字が綴られていた。
「優しさに甘えるばかりじゃ強くなれないよ。」