勝利の女神になりたいのッ!~第2部~

確かに浴室で泣いた。

けど、佐和さんに聞こえるように泣いた訳じゃない。

泣き叫んだりした覚えはない。

もしかして私は自分で自覚していないだけで泣き叫んだりしてたの?


驚く私を抱きしめたまま佐和さんはゆっくりと背中を撫でてくれる。


「泣いてないです。」


そんな佐和さんに私は嘘をつくしかなくて目を泳がせながら応えると、


「嘘ついても無駄だよ。」


佐和さんはニッコリと微笑んだ。


「嘘じゃありません。
本当に泣いてなんかいません。」


強く言い切る私は半ば意地になっていて、


「俺の態度が悪かったのに不安になったり悲しくなったりはしなかったんだ?」


だけど佐和さんの言葉に何故か涙が零れ落ちた。

「やっぱり泣いてたんだな。」


私の背中をトントンと優しいリズムで叩く佐和さん。


彼の胸に顔をうずめて必死に涙を堪えた。


「紫衣、ごめんな。」


震える体をギュッと抱きしめてくれる佐和さんに私は無言のまま首を横に振る。


だって佐和さんは何も悪くなんてない。


私がごにょごにょ講座を思い出して浴室に乱入したりしたから、驚いても仕方ない。


「紫衣、男の体を知ってるか?」


唐突に掛けられた言葉に私はきょとんとして佐和さんに視線を向けた。


男の体?

胸がなくて、筋肉質で…それから私にはないごにょごにょが存在する。

そういうことかな?


「ぷっ………。」


思考を巡らせる私に佐和さんはくすくすと笑い声をあげている。


「正解だけど、そういう意味じゃない。」


「ではどういう意味ですか?」


私の思考がよめるの?って聞きたいのをこらえて佐和さんに質問すると、

「やっぱり紫衣を悲しませるとわかってても浴室を飛び出して正解だったな。」


1人で納得する佐和さん。







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