勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
そんな時間を邪魔するのはテーブルの上でけたたましい音を鳴らす携帯の着信音。
「ちっ…」
佐和さんの舌打ちが聞こえて、私は彼の腕の中から解放された。
「嶋田からだ。」
テーブルの上の携帯の画面を確認して軽くため息を吐き出す佐和さん。
佐和さんが携帯に出ると私の携帯も鳴りだして、
「もしもし…」
確認するまでもなく通話ボタンを押して耳に当てた。
着信音で相手は芽衣ちゃんってわかっていたし、嶋田さんから佐和さんに電話がかかったと同時に私の携帯が鳴るなんて芽衣ちゃん以外に考えられない。
けど、いったい何?
どうしたの?
「紫衣、元気?」
「はい?」
電話越しに聞こえる芽衣ちゃんの声はとても楽しそうで、だけどその言葉の不思議さに首を捻った。
だってほんの数時間前まで一緒だったのに元気かどうか尋ねるなんておかしいよね?
「元気なの?」
だけど彼女は何故か私が元気なのかそうじゃないのかを尋ねたいらしく、納得いかないままに、
「元気だけど?」
そう言葉を返すと、
「なーんだ。」
あからさまに落ち込んだ声が聞こえてきた。
私の側には佐和さんが嶋田さんと会話をしていて、
「あ゛?」とか「うっせぇ!」とか「余計なお世話だ!」なんてちょっぴりお怒りモードな言葉が佐和さんの口から次々に飛び出していて気が気じゃない。
だから電話の向こうの芽衣ちゃんの言葉は私の耳を素通りしていくだけで、
「紫衣、聞いてる?」
彼女の大きくなった声にハッとした。
「ごめんなさい。聞いてなかった…。」
素直に謝ると芽衣ちゃんは納得したように、
「この状況で私の話を聞けってのが無理だよね。」
また後にするよってアッサリと電話を切ってしまった。