勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「紫衣……紫衣……。」
体を揺さぶられて瞼を持ち上げると瞳の中に飛び込んできたのは佐和さんの顔で、
「うひゃっ……。」
ビックリしすぎて奇声を上げる私にくすくすと佐和さんの笑い声が聞こえる。
寝ちゃった?
芽衣ちゃんに嘘のおやすみメールを送ってからプツリと切れている記憶。
もしかして、あれからすぐに寝ちゃったの?
「ごめんなさいっ。」
ソファーの背もたれから慌てて背中を剥がして起きあがる私の肩に両手を添える佐和さん。
「そんなに慌てなくてもいいよ。」
「でもっ!」
「そもそも俺が嶋田と長話したから退屈だっただろう?」
優しい佐和さんの言葉に胸がキュンと縮んだ。
別に退屈だなんて思って寝た訳じゃない。
多分野獣な佐和さんを想像しすぎて思考がストップしちゃったんだ。
だって本当に、どんなに想像しても野獣と佐和さんって私の頭の中で結びつかないんだもの。
「今日は長距離の移動もしたし、色々あって疲れたんだろう?」
「疲れてなんかいません。」
「明日からも移動続きになるから、もう寝ようか。」
私に手を差し伸べてくれる佐和さん。
このまま寝ちゃってもいいの?
大人な佐和さんには大人な時間が必要じゃないのかな?
私が子供だから…
優しい佐和さんは大人な時間を諦めてるのかな?
佐和さんの手を取って起き上がるんじゃなく逆に強い力で引っ張った。
不意をつかれた佐和さんは私の体の上に倒れ込んで、
「ごめんっ!」
ソファーの背もたれに手を着いて慌てて起き上がろうとしたけど私はそれを阻止するように彼の背中に腕を回してギュッと抱きついた。