勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
佐和さんは悪くないのに…。
悪いのは私。
佐和さんが野獣になれないのは私が佐和さんを理解出来ないから…
そんな風に考えると胸がギュウッと苦しくなって涙が溢れ出た。
「どうした?」
大人で優しい佐和さん。
溢れ出る涙を止められなくて彼のTシャツに染み込んでいく。
「紫衣もむこうにいる紫衣ちゃんも、俺が守るから…。」
耳元で囁かれる佐和さんの言葉。
彼の優しい勘違い。
「紫衣は何も考えなくていい。」
俺が紫衣を守るからって言われて彼が抱き締める腕の力が強くなった。
苦しいくらいに抱きしめられて頭に浮かんだままの言葉が唇から零れ落ちた。
「このまま佐和さんの中に溶けてしまいたい。」
佐和さんと一心同体と思えるほど彼の近くにいたい。
「………。」
私の言葉を聞いて彼は驚いたように私の体を引き剥がした。
そして顔を逸らしたまま
「さぁ、今日は疲れを取るためにもう寝ようか。」
そのまま言葉通り私に背中を向けて階段を上っていく。
何か変なこと言っちゃったのかな?
どうして私を見てくれないの?
佐和さんの急な態度の変化に騒ぎ出す心。
部屋の照明を全て落として急いで彼の背中を追った。
佐和さんに突き放されたみたいに思って、とても怖かった。
「佐和さん!」
階段を駆け上がり、ドアを勢いよく開けて部屋に飛び込む私を驚いたように凝視する佐和さん。
「佐和さん…。
ごめんなさい。」