勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
やっぱり佐和さんは困ってる?
それとも、好きがダメなのかな?
もしかして私が好きって伝えても佐和さんは受け止められなくなってるのかな?
嫌われちゃったのかな………。
「嫌いにならないで…。」
小さな呟きとともに溢れる涙。
ギュッと瞼を閉じて佐和さんにしがみついた。
私を嫌わないで。
ずっと心で唱えながら佐和さんの胸に顔を押し付ける。
ドクドクと脈打つ胸の音は私と同じ。
佐和さんの胸の音を聞いていると不安で冷たくなった体が一気に熱を持った。
嫌われていてもいい。
やっぱり私は佐和さんに溶かされる。
溶かされたいと願ってる。
彼の中に溶けてしまいたい。
彼と一つに溶け合いたい。
そんな風に考えている事が芽衣ちゃんの言う大人な女に近付いた第一歩だって知ったのは、その夜が明けた次の日。
移動途中の高速のパーキングで休憩している佐和さんと嶋田さんを車に残したままお土産売り場のフードコーナーで芽衣ちゃんと2人っきりで話をした時だった。
私は大人への道を一歩踏み出し、けれどそれは心だけで精一杯だったらしい…。
だってまさかの安眠に、そのまま溶ける感覚を感じながらついてしまったんだ。
「佐和さんの忍耐力はある意味超人的だね。」
ソフトクリーム片手に話す芽衣ちゃん。
「忍耐力?」
「そう、忍耐力!」
「……………。」
「だって寝ちゃったんでしょ?
紫衣そのまま寝ちゃったんでしょ?
そんな状況で寝息とかたてちゃってたんでしょ?」
「……………。」
「そこまでいって寝ちゃったんでしょ?」
「どこに行ったの?」
「そのいくじゃないから…。
お出掛けとかそういうんじゃないから…。」
大きくため息をつきながら私を可哀想だと言いたげに見つめる芽衣ちゃん。
やっぱりあのまま眠りについたことは相当にいけないことだったらしい…。