勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
気まずい沈黙が広がる部屋。
居心地の悪さは格別で、
「重家の様子を…「その必要はない!」
重家を理由に部屋から出ようという私の魂胆は見破られていたのか、三成は私の言葉を遮った。
けど、何?
必要ないってなんなの?
「六助が後でここへ連れてくることになっている。」
何も言わないのに三成の言葉は的確に私の思うことに応えてくれている。
怖っっ!!
まるでエスパー?
「紫衣の考えていることなど口にしなくてもわかる。」
不思議そうに三成を見つめると瞳に映るのは不適に笑いながら言葉を落とす三成で、
「なんかムカつく…。」
私は小さく息を吐きながら呟きを漏らした。
「殿、奥方様。
朝餉の用意が整いました。」
襖の向こうから掛けられる声は桔梗さん。
その声に応えるように三成は立ち上がり襖を開けて部屋を出て行く。
「待って!」
私は三成と一緒にいたくて慌てて背中を追ったのに。
「少し、お話が…。」
「チッ…。」
「おや?今舌打ちが聞こえましたが…。」
「さぁ?空耳じゃないの?」
「さて、座って頂けますね。」
「嫌だと言ったら?」
「手荒な事はしたくないんですよ?」
部屋の入り口でニッコリと笑いながら立ちふさがる桔梗さん。
うっかりしてた…。
朝の行事は朱里さんや三成とのやり取りだけではなく、一番厄介な桔梗さんを忘れてた。
「あ…朝餉なんだよね?」
最後の抵抗とばかりに遠ざかっていく三成の背中に視線を向けながら小さく呟くと、
「それ程時間は取らせません。」
あなた様次第ですけどねってとても綺麗な笑みを浮かべて応える桔梗さんに私が逆らえる訳もなく素直に彼の言葉に従った。