勝利の女神になりたいのッ!~第2部~


向かいあって座る私と桔梗さん。


私を見ながら大袈裟にため息を吐き出す。

もう言われることもわかってる。


うんざりするほど聞いてきたお小言。


だから彼に視線を向ける気にも耳を傾ける気にもなれない。


「話っていつもと同じことなんでしょ?
だったら…。」


もう何も聞きたくないって言葉は桔梗さんの言葉に遮られた。


「宴の日取りが決まりました。」


「…え?」


「宴です。う・た・げ!」


思いがけない言葉に頭がフリーズする。


「宴…。」


ポツリと零れる言葉もオウム返しにしかならなくて、


「準備を進めねばなりません。」


だけど、そんな呆けた私にはかまわず話を進めていた。


「時間がないのですよ?毎日毎日懲りもせずに小袖を身につけ、下働きの人間になる努力をするのではなく、奥方としての身のこなしや教養を身につける事が大切なのではないですか?」


淡々と話される言葉はグサリと私の胸に刺さる。

けどっ!

だけどっ!


「前の宴の時に紅葉さんに習ったもん。」


「それでは今回は何も準備をしなくても大丈夫なのですね?」


「だ…大丈夫…だもん…。」


「本当に?」


「うん!」


「言葉使いや振る舞いに自信が持てるのですね?」


「………。」


「着物の裾は踏まずに歩けますか?」


「………。」


「重家様が泣いたとき普段通りではいけないのですよ?」


「それってどういうこと?」


「泣いてる重家様を見て涙ぐむのはいけないと申し上げたのです。」


「………。」


「どうして泣くの?
泣かないで…。」


黙り込む私をチラリと見てから普段の私の口調を真似る桔梗さん。


憎たらしい!
ムカつく!


けど、何も言い返せないのは本当の事だから…。








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