勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
シズシズと三成の側まで歩み寄り、
「いってらっしゃいませ」
極力落ち着いた声を出して頭を深く下げた。
教本通りのお見送り。
私に視線を向けて頷く三成、そのまま馬は歩き出すのかと思ったけど何故か彼は馬から下りて私の前に立った。
「こってり絞られそうだな。」
「はい…。」
「無理はするな。」
みんなには聞こえないように私の耳元に唇を寄せて囁くように言葉を落とす三成。
「行ってくる。」
皆にも聞こえるような大きな声で告げた後、馬に跨り出掛けていった。
頭を下げて彼を見送る私の頬は緩みっぱなしで、しばらくずっと頭を下げていた。
だって嬉しかったんだもの。
無理をするななんて心配してくれてるのがわかるでしょ?
やっぱり三成は素敵な人で、とっても優しい人。
嬉しさのあまりに抱きつきたい衝動をこらえた自分を誉めてあげたい。
おしとやかに!
心がけても嬉しくなると彼にギュッとしがみつくように抱きつきたい。
ちょっと困った顔で、だけどちゃんと受け止めてくれる彼の胸も、背中に回される腕もとても優しく私を包んでくれる。
今朝は全く触れ合えなかったなとほんの少し寂しくなった。
そんな感傷に浸っていると、
「いつまで頭を下げ続けるのですか?」
呆れたような桔梗さんの声が頭上から降ってきた。
「朝餉に参りましょう。」
こくりと頷くと手を差し出され、朝餉の部屋まで桔梗さんがエスコートしてくれた。