勝利の女神になりたいのッ!~第2部~


「こちらに準備が整っています。」


襖を開けると重家と朝餉の膳が目に入った。


「重家~。偉いですね~。1人で待っていたんだね。」


着物の裾を持ち上げて重家に駆け寄る私。


「ウォッホンッッ!」


背後から聞こえる桔梗さんの咳払いにピタリと足を止めた。


早速やっちゃったよ…。

だけど、重家偉いよね?
泣かずに1人で部屋で待ってたんだよ。
顔の前に手を翳して手遊びしてる姿を見たら可愛くて夢中になるのは仕方ないじゃない。


言い訳はたっぷり心の中だけで止めておいた。


さぁお説教聞きましょうか!


「紫衣様…。」


「はい。」


覚悟を決めて桔梗さんに向き合えば、


「本当に仕方のない姫様です。」


彼は微笑みを浮かべながらポツリと言葉を零した。


「ごめんなさい。」


しょんぼりと肩を落として謝ると、桔梗さんも何故だかしょんぼりとしてしまう。


いったいどうしちゃったの?


桔梗さんがどうして落ち込むの?


「ほんっと!みんな紫衣様には甘いんだからね!」


突然現れた声の持ち主は呆れたという様子で言葉の後に大きなため息を吐き出した。


「いつもいつも突然現れてそんなにビックリさせたいの?」


今回は悲鳴ではなく言葉をちゃんと掛けることが出来た私は、ちょっぴり成長してるよね?


「そんな憎まれ口ではなく可愛い悲鳴が聞きたかったのですが…。」


目の前にいたのに瞬間移動のように目にも止まらぬ速さで私の隣に移動をして耳元で囁かれた。


「椿さん!からかわないで下さい!」


毎回神出鬼没な椿さん。

今回も私を驚かせてくれた。


「桔梗、もういいよ。
続きは私が引き受けるよ。」


椿さんの事ですっかり忘れてたけど桔梗さんも一緒だったんだ。


しょんぼり桔梗さん、本当にどうかしちゃったのかな?


それに桔梗さんが椿さんの気配に気がつかないのも変だよね?


具合でも悪いの?








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