勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
ハッと目を開ければ視界に飛び込んできた見慣れた天井。
私の部屋?
…………夢?
夢を見たの?
「おはようございます紫衣様。」
まだスッキリとしない頭で考えを巡らす私に掛けられた声。
びくりと体が跳ね上がった。
「おはよう紅葉さん。」
何もなかったかのように頭の中のもやもやを隅に追いやって挨拶を返す。
あれ?
紫衣様って呼ばれた?
改めて紅葉さんに向き合えばかつて見たことがないほど爽やかな笑みを浮かべて座っている紅葉さんが瞳に映った。
なにか企んでるのかしら…。
それともおかしくなっちゃったの?
不思議そうに視線を向ける私に紅葉さんは一層その笑みを深めた。
「頭でもって打っちゃったの?」
思わず口から零れた言葉は失礼極まりない言葉で、
「どういう事ですか?」
微笑んだまま鋭い視線を向けられた。
だって、紅葉さんでしょ?
紅葉さんだよね?
どう考えても爽やかな微笑みに丁寧な言葉使い。
おかしいって思うよね?
困惑しても仕方ないよね?
紅葉さんなんだよ。
私をいつも阿呆紫衣って呼ぶ紅葉さんなんだよ。
なんか変だよね?!
やっぱりグルグルと考えを巡らせる私の頭の中。
目覚めた時の不快感なんてスッカリ飛んでいた。
「はぁ~………。」
深いため息が聞こえて視線を向けるとニヤリと笑った紅葉さんと目が合った。
「何?」
ドキリと波打つ心臓。
やっぱりという焦燥感。
何か企んでるんだっていう確信。
胸がギュッと縮こまるのを感じた。