勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
私の目の前には跪いて頭を深々と下げる桔梗さんと椿さん。
何?
どういうこと?
茫然とする私に紅葉さんが意地悪な笑顔を浮かべながら説明してくれた。
どうやらこれは毅然と振る舞うための訓練だったらしく、万が一招待した殿方に迫られたときに私がキッパリと断れるかどうかを試したんだとか…。
「申し訳ありません姫様。」
「ご無礼をお許し下さい紫衣様。」
「阿呆紫衣にしてはなかなか立派だったぞ。」
順に桔梗さん、椿さん、紅葉さんが言葉を落とす。
なーんだ、やっぱり本気じゃなかったんだ。
よかったぁ~。
なんて思えるわけないでしょ!
許せない!
許さないんだからね!
「3人とも大嫌いっ!」
歩き方の訓練なんてもう知らない!
作法なんて守れない!
怒りに任せて言葉を投げつけて私は着物の裾をガバッと掴んで廊下をバタバタと足音を響かせながら自室まで走った。
酷いよ…。
そりゃ確かにキッパリと人を拒絶するのが私はとても苦手だよ?
どうにか誤魔化しちゃえって思っちゃうよ?
それがいけないってわかってるよ?
だけどあんな風に試すなんて酷いじゃない。
とっても心配したのに…。
みんな大好きだから…
ずっと一緒にいたいって思ってるから…
だからもしも一緒にいられなくなったらどうしようって、すっごくすっげく心配したのに!
酷いよ…。