勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
無言のまま視線だけで会話をしていた2人だけど、
「朱里の言うとおりだ。焦れったいか…。」
ぽつりと呟くように言葉を落として三成は立ち上がった。
すると三成に続いて左近さんも立ち上がり襖をガラリと開け放った。
スタスタと襖をくぐり三成が部屋から出ると左近さんも続いて部屋を出た。
そしてパタリと襖は閉められ部屋には私と朱里さんが2人っきりで向かい合うように座ったまま残された。
「最初にお聞きしたいことがあります。」
少し距離のあった彼女との間がグッと近づいた。
「何?」
朱里さんの迫力と縮まった距離に私はほんの少し体を仰け反らせながら返事をする。
「紫衣様は今お幸せですか?」
「はい?」
何を聞かれるのかと身構えていたのにそんなこと?
だから思いっきり疑問系で語尾を上げながら首を傾げてしまった。
「ですから!紫衣様は今が幸せだと感じてらっしゃるのですか?!」
今?
幸せ?
「うんっ!し、…幸せだよ。」
「壊れると悲しいですか?」
「えっ?…壊れちゃうの?」
「もしもの…仮の話です。」
「なんだ、朱里さん驚かさないで。」
一瞬ギクリとしたけれどホッと息を吐き出す。
「悲しいですか?」
ズイッと畳の上を座ったままの体制で私との距離を更に縮めながら朱里さんはもう一度私に尋ねてきた。
なんかちょっぴり怖さを感じながらも、
「そ、そりゃ…悲しいよ。」
「では今の幸せをずっと続けさせる為に一つ注意事項があるのですが、お聞きになりますか?」
やっぱり怖いと感じる。
それに、話の全貌が見えないままに質問され、壊れるのが決定されてるかのような話しの振りに苛立ちを感じた。
「あのね?
私の応えは一つなの。
今のまま三成と一緒に過ごすことが幸せなの。
それにその幸せには屋敷や城で関わってきた人が誰一人欠けることなく一緒にいるってことも含まれているの。
私欲張りでしょ?
呆れちゃうでしょ?
だけどそれが私なの。
これが私の姿なの。」