勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「紫衣、泣くな。
泣いてはいけない。」
困ったように眉を下げている三成。
「ごめんなさい。」
私は俯き謝ることしかできない。
「よいのだ。俺が悪い。紫衣は悪くはないのだよ。」
私の髪を撫でつけるように頭に掌を滑らせた後、頬を伝う涙を拭ってくれた。
「重家に笑われてしまうな。
大人気ない父だと重家に呆れられてしまいそうだ。」
「そんなこと…。」
「紫衣もだぞ。
泣いてばかりいると重家に笑われてしまう。」
とても優しい笑顔に私の胸はジクジクと痛んだ。
三成は決して最後まで私を追いつめようとはしない。
それが彼の強さであり優しさ。
だけどきっと彼の本当を知らない人には冷たさや弱さだと映ってしまう。
「清正様と良君がとてもよく似ているのがずっとずっと気になっているんです。
それは今では恐怖にさえなっています。
もしも彼らが繋がっていたら…。」
「紫衣は良君とやらと仲良く出来ぬのが辛いのか?」
「そうではありません。」
「ではいったい何に怯えている。」
「彼も歴史を知る人です。」
関ヶ原では徳川についた清正。
三成は悟っているのだろうか、清正と今後心を通わすことがないということを…。
だからなのか私の言葉に驚きもせず、冷静なまま言葉を落とす。
「紫衣が俺を知り、俺と共に生きるというだけで十分なのだよ。」