勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「紫衣、このままでいいのか?」
ぎゅっと私を抱き寄せながら佐和さんが言葉をかけてくれる。
このままでいい訳ない!
私は佐和さんのシャツをぎゅっと握り込んでから彼の腕の中で体を反転させた。
芽衣ちゃんに伝えなきゃいけないことがある。
歴史は私にとって過去であり、だけど未来。
変えたいから紫衣と私は時代を超えて巡り会った。
そして願いを叶えるため、私たちは入れ替わったんだもの。
ずっとずっと重くのしかかっていた事実から私は逃げちゃいけないんだ。
親友を奪った私を親友だと受け入れてくれた芽衣ちゃんに甘えてちゃいけないんだよね。
伏せたい事実だけど、その都度きちんと向き合わなきゃいけない。
「芽衣ちゃん、あの…ね…「紫衣、ごめんなさい」
振り返った私と同時に芽衣ちゃんも振り返り同じタイミングで言葉を掛け合う。
「ぶはっ。」
「息ピッタリだな。」
そんな私達を見て噴き出しながら言葉を掛けるのは嶋田さんと佐和さんで、2人とも私と芽衣ちゃんそれぞれをその腕で優しく包み込んでくれている。
嶋田さんの腕の中で振り返った姿のまま照れ笑いする芽衣ちゃん。
瞳は潤んでるけど、目尻の涙を細い指で拭いながらニッコリと微笑んでいた。
「紫衣を否定した訳じゃないの。
言い訳なんだけど…
私の中で紫衣は紫衣そのままで…
うまく言えないんだけど、忘れちゃってたの。
その…紫衣が紫衣と入れ替わったこと、忘れちゃってたの。」
芽衣ちゃんは私が何よりも嬉しい言葉を掛けてくれた。