勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
良君……――。
紫衣をあんなに悲しませたのに…
どうして?
彼の紫衣への執着が怖い。
公園で聞いたこの旅の理由。
ただの旅行だとは思ってはいなかった。
だけど、こんな理由があるなんて…。
怖くて頭の中から彼の存在がどんどん大きくなる。
話を聞いた公園を離れ、車で移動している間も私はずっと彼の事を考えていた。
お兄ちゃんと紫衣の邪魔をしないで欲しい。
彼に届くはずのない願いを胸に抱きながら、ずっと考えていた。
届くはずのない願いと答えの見えない考えを巡らせていた私が次に車を下りたのは常念寺というお寺だった。
車から下り、佐和さんに手を引かれ歩いて着いた場所はお寺の表門の前だった。
「この門は京都聚楽第の裏門であったと伝えられいるんだよ。
毛利輝元が豊臣秀吉から与えられ、伏見の毛利邸に移築したものを、さらに輝元が萩城築城前に当寺を宿所にした縁によって、寛永10年(1633)常念寺の表門として移築寄進したものだと言われているんだ。」
瞳を輝かせながら話をしてくれる佐和さん。
「だけど京都聚楽第は謎が多いままで本当にこの門がそうなのかという確証はないらしいけど…。」
「ここが佐和さんが一番来たかった場所なの?」
ここに来る前に確かそんな風に話していた気がする。
門を見るだけだなんて興味が沸かないと嶋田さんに別行動すると言われてた佐和さん。
「紫衣もつまらないよな?」
つき合わせてごめんなとちょっぴり肩を落とす佐和さん。
興味がないわけじゃないけど、確かに門を見るためだけに車を走らせるのには少しだけ驚いた。
だけどとても立派な門だ。
贅の限りを尽くした関白秀吉の住居として建てられた京都聚楽第の裏門だったと言われたら興味が沸かないとは私は言えない。
「聚楽第って関白秀吉の住居として建てられたものですよね?」