勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
入れ替わった現代ではお兄ちゃんは豊臣を滅ぼした奸臣と言われ、語り継がれてきた。
だけど私はそうは思わない。
佐和さんも、私と入れ替わった紫衣も同じ気持ちだと思うと救われるような気持ちになる。
「真実は隠されているけれど、明らかになりますよね?」
だから私はここにいる。
「その為に紫衣はここに来たんだろ?」
「はいっ!」
チラリと私に視線を向けて話し掛ける佐和さんに力強く返事をした。
満面の笑顔で…。
だけど私の返事を聞いた佐和さんはちょっぴり不機嫌な様子で、
「ハァ――…」
ため息を吐き出す。
どうして?
何がいけなかった?
不信に思った私は佐和さんの顔をコッソリ伺い見るけど、
「今は見るな。」
フイッと顔を背けられてしまった。
何故?
何がいけなかったの?
急に変わってしまった佐和さんの態度に私はとても不安になって俯き、込み上げる涙をぐっとこらえた。
わからない…。
わかんないよ!佐和さん…。
眉間に皺が寄った佐和さんの顔をチラリと横目で見て、やっぱり何かしちゃったのかなって悲しさが胸の中に広がった。
重く苦しい空気が私達の周りに立ち込める。
何か話さなきゃと思うのに何も話せないまま沈黙だけが続いた。
「車に戻ろうか。」
何も出来ないまま沈黙を破ったのは佐和さんで、私は俯いたまま佐和さんの声に促され彼の背中を追った。
手も繋ぐことなく戻った車。
鍵が開けられ助手席のドアを開けるのを戸惑う私はピカピカと光る車のドアから視線を外すことなく立ち竦んでしまった。