勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
佐和さんの行動も考えも私には全くといっていいほどわからない。
車外で話す佐和さんと嶋田さんの様子に視線を向けると、表情は対照的でニヤニヤと笑顔を浮かべる嶋田さんに眉間にギュッと皺を寄せる佐和さん。
嶋田さんの様子を見ている限りでは深刻な話をしているような感じではなく、普段佐和さんをからかうときによく見せる表情だった。
佐和さんは嶋田さんのからかいをサラリと受け流すけれど、表情は今と同じ様に少し険しくなる。
だから今ガラス越しに見ることが出来る2人の様子は見慣れた光景で、ここに来るまでの佐和さんの行動に不安な気持ちがなかったら何も考えることなんてないけど、やっぱり不安な気持ちは拭えない。
急展開に思考は全くといっていいほどついてはこず、車外から視線を自分の膝に落として彼の口付けを思い出し、唇にソッと触れた。
「さっきのキスを思い出してたとか?」
俯き指先で唇に触れていた私にガチャリとドアが開く音を響かせたと同時に佐和さんの声が聞こえてびくりと肩が揺れる。
恥ずかしい…。
「ち…違ッ…」
頭をぶんぶんと振って否定の言葉を出そうとしても焦って言葉にならない。
「違わないだろ?」
私の顎を指先で持ち上げながら話す佐和さん。
真正面から私を見る佐和さんの綺麗な顔に益々焦って頬が熱くなる。
俯きたいけど両頬に佐和さんの手が添えられていて視線を落とすことしか出来ない私の顔はきっと真っ赤に染まっているに違いない。
唇が触れそうなほど近くにある佐和さんの顔、お互いの息が掛かるほどの近さに息をするのも戸惑いを感じた。
「キス…やり直し」
息をつめて体を硬直させるほど緊張している私に降ってくる優しい口付け。
だけど唇ではなく額にソッと触れるだけの口付けをした後
「続きはホテルについてからな。」
頭を撫でながら佐和さんは離れていった。