勝利の女神になりたいのッ!~第2部~


話を聞き終わっても戸惑うばかりで、だけど私は佐和さんの事を何も知らなかったんだと改めて思った。


当初山口県で宿泊するのは街の中の小さなビジネスホテルの予定だったのが急遽変更になり、今の立派なホテルに宿泊する事になった事をまず説明された。


「嶋田の奴が…」


苦い表情で話す佐和さん。


「このホテルに何か不都合があるんですか?」


「ある。大ありなんだ。」


「どうしてですか?」


更に表情を曇らせて佐和さんが言った言葉に私はビックリして言葉が出なくなった。


「ここは、俺の母親が経営するホテルなんだ。」

「……………」


「嶋田が父さんに連絡して、様子を見に来ていた父さんに気付いたのが常念寺で紫衣と話をしていた時なんだ。」


「だから急に佐和さんが変わっちゃったんですか?」


「すまなかった…」


あの時どうして急に佐和さんの態度が変わっちゃったのか、ただ怖くて不安で解らなかったけど、お父さんに逢ってビックリしちゃったのかな?


「だけど…どうして?」

お父さんがいたのなら私も挨拶をしたかった。


私の両親に挨拶をしてくれた佐和さんみたいに振る舞いは自信ないけど、ちゃんと挨拶したかったのに…。


もしかしたら私が至らないから佐和さんはまだご両親に逢わせたくないのかも知れない。


暗い気持ちに包まれて肩をシュンと落とす私に、

「紫衣がどうのという訳ではないんだ。
落ち込まないでくれ。
俺が面倒だと避けたかっただけなんだ。」


出来ればずっとアイツらから紫衣を隠しておきたかったなんて口にする佐和さん。





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