勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
ぐったりというよりは、げっそりといった様子の佐和さんはソファーから両腕を広げて前に伸ばしている。
両腕を広げて伸ばすのは私においでという彼の合図。
普段はその合図にちゃんと「おいで」と言葉がついてるけど、今は言葉も出ない様子で、
「大丈夫ですか?」
私はさっきは掛けれなかった言葉を口にしながら彼の腕の間に近寄った。
スッポリと彼の胸に収まる私の体。
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、ちょっぴり苦しい。
それに、近寄った瞬間床に膝をつけて座っている彼に身を寄せるつもりが、私は今何故だか彼の膝の上に跨るように座っていて、
「佐和さん…」
「何?」
恥ずかしさで言葉が出ないのに彼の表情は笑顔だったりする。
「ハァー……、癒される」
体を捩る私を更にぎゅうぎゅうと抱き締めて胸に顔を埋める佐和さん。
恥ずかしすぎて言葉も出ないよ…。
いつもは私が彼の胸に頬をくっつけて抱き締めてもらってるからか落ち着かない。
でも、胸に顔を埋める佐和さんも新鮮で…
「佐和さん、可愛いです」
思わず言葉が零れて彼の背中に腕を回した。
私の言葉にぴくりと反応する佐和さんの体。
「可愛い?」
言葉と共に私を見上げる佐和さん。
その表情はニンマリと笑っていて…
何か企んでそうに見えた。
「だったら紫衣からキスして…」
「え??」
「いつもと逆だろ?紫衣から俺にキスしろよ。」
「そんなッ…、ん…ン…フッ…ん…」
戸惑う私の後頭部に佐和さんの掌が触れて私の唇は佐和さんの唇に塞がれた。
甘い甘い口付け。
甘い甘い時間。
だけど…
こんな時って必ずといっていいくらい何かが起きるのは宿命のような私達。
今も携帯がうるさいほど部屋に鳴り響いた。
着信音の後は、
「チッ…」
佐和さんの舌打ちもお決まりで、
「どうしていつもいつも狙ったかのようなタイミングなんだ?」
佐和さんは苦笑いをしながらテーブルの上の携帯に手を伸ばした。