勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「どうして…ッヒク…わ…私…面倒なの?」


嗚咽を堪えながら言葉にするけど、まともに話が出来るわけもなくて


「あー…、ちゃんと説明しなくて悪かった。」


だけど佐和さんには私の言いたいことがわかったのか困ったように眉を寄せて私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。


「面倒なのは紫衣じゃなくて、父さんだよ。
紫衣もビックリしただろ?
あの人は普段から人よりテンションが高めで、俺が彼女を紹介するなんて言ったら浮かれてどこまで登り詰めるかわかったもんじゃないんだ。
だから紫衣にはもう少し先に紹介するつもりだったんだ。」


不安にさせてすまないって私をぎゅうぎゅうと抱きしめてくれる佐和さん。


「それに…言いにくいけど、どうせわかることだから先に言っておくけど…父さんを嫌わないで欲しいんだ。」


「へ?」


嫌うなんて…そんな…


どうしてそんな心配するのかわからないよ。


「あの人、飲むと…調子にのって…その、つまり…」


言いにくい事なのか歯切れの悪い佐和さん。


首を傾げながら佐和さんを見つめる私の耳にソッと唇を寄せて


「紫衣には刺激的な男と女の話がきっと出ると思うし、誰も暴走した父さんを止められない…」


って…


え?


男女の刺激的な話?


それって、もしかして…

もしかすると…


男女のごにょごにょ講座の事?


行き着いた思考に恥ずかしさからカッと頬に熱を持つ。


きっと顔は真っ赤に染まってるに違いない。


「想像通りだよ。」


恥ずかしそうにする私を見つめながら言葉を落とす佐和さん。


佐和さんの言葉に更に恥ずかしさが増して、俯く私に


「そういう顔を父さんに見せたくなかったんだ」

ため息混じりに佐和さんは言葉を吐き出した。


「まぁ嶋田と芽衣ちゃんが一緒だし、母さんには父さんから目を放さないように言うつもりだから…
俺も紫衣を守るから、今日の食事は我慢して欲しい。」


ぎゅうっと抱き締めてから頬に触れるだけの口付けを降らす佐和さん。




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