勝利の女神になりたいのッ!~第2部~



それに三成がいるときは私には全くといっていいほど接触しなかった清正が私の席近くまで寄ってきて側にドスンと腰を下ろした。


「さっきから同じ女ばかりの相手でつまらん。今度は奥方様に酌をしてもらおうか」


そんな風に言いながら私に杯を差し出した。


「清正の相手をしてやってくれぬか紫衣殿。わしはこちらの綺麗なおなごに相手してもらおう」


清正の動きを阻止しようと立ち上がった椿さんを制止しながら話す秀吉。


こんなところを紅葉さんに見られたら問答無用で叱られるのは私なのに...。


椿さんも困ったというように眉をハの字に下げて私を見つめる。


秀吉に言われてしまってはさすがの椿さんでも動けない。


宴の前の注意事項を思い出しながらも、思いもよらない事態に苦笑いしか浮かべられない。


「では、どうぞ」


嫌な顔をするわけにはいかないので頬が若干ひきつっているかもしれないけれど、笑みを浮かべながらお酌をする私に満足そうに笑う清正。


こんな事になるのなら桔梗さんに側にいてもらうんだった。


でも後悔しても遅いよね。


それに重家を泣かせてはいられないから仕方ない。


「奥方様とは二回目ですがお元気そうでなによりです」


「はい、ありがとうございます」


「三成とは仲睦まじい様子で羨ましい限りです」


「はい、とても大切にしていただいて幸せです」


「ほう、これはご馳走様です」


ニヤリと笑う清正。


嫌な感じ...。





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