勝利の女神になりたいのッ!~第2部~


怒りを収めるのに必死で清正の言葉の意味を深く考えていなかった私が後悔したのは、それから暫くしてからで、


「そろそろ帰ろうかのう」


そう言って立ち上がった秀吉に視線を向けたときだった。


「では、私はお見送りを...」


秀吉の行動に合わせるように立ち上がる椿さん。


これで清正から解放される。


そんな風に安堵の息を吐き出す私の耳を疑う秀吉の言葉に唖然とするしかなかった。


「清正はわしを気にせずゆっくりするがよい」


その言葉にハッとして清正に視線を向けると勝ち誇ったような彼の表情が目に入ってきた。


もしかして、邪魔者がいないという言葉はこういうこと?


最初から仕組まれていたかのような現状に頭の中は真っ白で、それでも助けの綱の椿さんに視線を向けると椿さんも驚いたように固まっていた。


桔梗さんは?


重家を連れて行ったまま戻っていない。


普段なら紅葉さんだって桔梗さんだって他の者に言いつけて私の側にいるはず。


その二人も戻ってないということはこの状況を作るために、かなり強行な手段が使われていると疑った方がいいのかもしれない。


「私も一緒に...」


ダメ元で立ち上がりながら言葉をかけると、秀吉はその私の行動すらわかっていたかのように両手を素早く振りながら最後まで言葉を言わせてくれない。


そして、そのまま椿さんの肩を抱きながら襖を開けて部屋を出て行った。


「ご挨拶を...」


清正と二人にさせられるなんてとんでもないこと!!


だから慌てて二人の後を追おうとして、清正に阻止された。








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