勝利の女神になりたいのッ!~第2部~


「潮時だったんだろうね」


冷静な声を響かせるのは椿さん。


その椿さんの言葉に紅葉さんも桔梗さんも頷いた。


私もそう思うしかなかった。


城に行かせたくないと思ってくれた三成には申し訳ないけれど、三成の立場を悪くしてまで守ってもらわなくてもいい。


「城に行ったからといっても私は何も変わらないんだから!」


心の中でだけ呟くつもりが声にしていた。


その言葉に満足そうに頷く3人。


「殿には申し訳ありませんが、そんな姫様だから私たちは大丈夫だと信じています」


「ちょっと他の姫とは違いますからね」


「作法はもう一度叩き入れないと城になんて出せないけどな」


褒めているのやらけなしているのやらわからない言葉だけど空気が和んだ瞬間だった。


紅葉さんの言葉に恐怖を感じないわけじゃないけど、本当は一番私を作法の訓練の時に甘やかしてくれるのが紅葉さんだって知ってるから笑顔になれた。


きっと照れ隠しなんだよね。


それにやっぱり三成も私もとても恵まれた環境にいるんだって確認できた。


愛情たっぷりに思いやってもらえるなんて幸せ以外の何ものでもない。


「そうと決まればまた忙しくなるよね」


気合いたっぷりに口を開く私に頷く3人。


「体調管理の方もしっかりして頂かなくてはいけませんね」


桔梗さんはとっても意地悪な顔をして懐から小さな包み紙を取り出して私の掌の上にソッと置いた。


受け取ってから後悔しても遅いけど...


「薬ってまだ飲まなきゃならないの?」


白い小さな包みの中身は桔梗さんと紅葉さんのお手製のお薬だよね?


とっても苦くて飲みにくい薬。


よく生薬配合ってコマーシャルで聞いたけど配合どころじゃなくて生薬ばかりなお薬は体にいいかもしれないけど、味は勘弁願いたい。


「当然です」








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