勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
朱里さんに散々からかわれて朝餉の用意されている部屋に向かう途中
「秀吉様からの書状ですが、予想通り紫衣様がお城に行く内容のものだと思います」
きっと心の準備をするようにという配慮で言ってくれているのだろう。
「はい。わかっています。ですが三成様の判断に従います」
そう答える私に朱里さんは綺麗な笑みを浮かべたまま頷いてくれた。
お城を訪ねることを怖いと思う気持ちもある。
でも避けられないのならば私は私らしく振る舞うしかない。
三成の妻として三成に恥をかかせたくはないけれど、私が一番大切なのは三成だから秀吉に何を言われても三成のためだけに生きることを曲げるわけにはいかない。
その気持ちだけは何があっても変わらないって思えるから....。
「紫衣は紫衣のままで十分ですよ」
そんな私の気持ちを察してくれたのか優しい朱里さんの声に癒やされた。
「はい。三成様の為にいい妻でいたいけど、彼のためにだけ生きる妻でいたいから何があっても私は彼の側から離れない」
決意を込めた声を発して廊下を進んだ。
その言葉をこっそり私たちの様子を伺っていた紅葉さん達にもしっかり聞かれていて、後で散々からかわれたけど...。
このままの私でいいっていってくれる三成も朱里さん達もとてもあたたかくて幸せだと感じたんだ。
書状には今日の仕事は休んでいいと言うことと私を近いうちに城に来させるようにと書いてあったと言うことを聞いたのは朝餉がすんで部屋で三成とくつろいでいる時間だった。
滅多にないゆったりとした時間。
休みを取らない三成とゆっくりと過ごせる時間なんて普段はとれなくて、重家もいっしょに家族水入らずで部屋に籠もって過ごした。
襖を開けて過ごしているから庭の緑がとても美しく、風も優しく部屋を通り過ぎていく。
幸せな時間。
この幸せがずっと続きますようにと祈るよりも続けてやるって気持ちになった。
秀吉からのすてきなプレゼントに感謝しながら一日中三成と一緒にいる時間を堪能した。