勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
かなりの時間を経過したと思うけど準備は整った。
身体の準備はこれ以上ないってくらいにチェックしたから大丈夫だと思う。
後は心の準備だけど、もう決めたから大丈夫。
だよね?
ちょっぴり不安だけど...
これ以上佐和さんを待たすのはいけないと思って思い切って部屋に戻ることにした。
そっと扉を開けてそろそろと足を向けると部屋には誰もいなくて
「あれ?」
気合たっぷりな私は一気に気持ちが緩んだ。
緊張してたんだけどな。
それにしてもどこに行ったんだろうって部屋をきょろきょろと見回すとベランダからかすかに香る煙草の臭い。
部屋で吸ってくれてもいいのに佐和さんはいつもベランダに出て煙草を吸っている。
長い指に挟んだ煙草を唇に寄せる姿が私は好き。
ベランダの窓越しに見える佐和さんは景色を眺めてるのか私に背中を向けるような姿で、だから遠慮なく見つめることが出来る。
じっと見つめていると不意に佐和さんが振り返って私をその瞳に捉えた。
持っていた携帯用の灰皿に煙草を押しつけてパチンと蓋を閉じた佐和さんはベランダの窓を開けた。
「上がってたのか」
微笑みながら私に近づく佐和さん。
まだ髪を乾かしていなかった私の側に来ると手を引いてソファーに誘導してくれる。
「佐和さんが持ってたの?」
テーブルの上に置かれたドライヤーに視線を落として言う私ににっこりとほほ笑む佐和さん。
「紫衣の髪を乾かすのは俺の役目だからね」
そんな甘い言葉をサラリと言って私の髪を乾かし始めた。
細くて長い佐和さんの指の間に滑る私の髪。
「紫衣の髪は本当に綺麗だね」
いつもの甘い甘い佐和さん。