勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
ゆるゆるとした時間を過ごせなくなったのは重家の泣き声が終始部屋に響き渡るから。
だけど、待っているだけの時間がとても有意義に変わったのも重家のお陰。
朝の出立の時、寂しくて仕方なかった事を懐かしめる自分がいて、重家を抱いたまま門で彼の背中を見送りながらそっと微笑んだ。
生まれてすぐの頃は部屋で重家と過ごす時間が長く、時々寂しくてどうしようもない気持ちになったこともあった。
何をしても泣きやまなくて一緒に泣いたときもあった。
だけど、そんな時は必ずゆきさんがいてくれて私を励ましてくれていた。
けれど、そのゆきさんが城に帰ってしまう。
重家が生まれて変わった私の環境がまた、今日変わってしまう。
ゆきさんがいなくなるのはとても心細い。
だけど、そんなこと口に出来ない。
帰らないで欲しいなんて私の我儘だってわかっているから笑顔で見送らなくちゃいけないんだよね。
「重家、だけどやっぱり寂しいね。」
重家を抱いたままポツリと呟いた。
部屋には私と重家だけで、つい本音が零れ落ちた。
「紫衣様、ゆき様も同じお気持ちでございます。」
背中から聞こえる声に私はギクリと肩を揺らした。