勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
柔らかな声で紡がれる佐和さんの言葉。
いつもと変わらない彼の表情。
けれど、内容はとても柔らかく受け止めることは出来なかった。
「すでに歴史は動いているんだよ。紫衣達が入れ替わる前に…」
一体どういうことなのか私にはさっぱり見当もつかない。
歴史を変えるために私と紫衣は入れ替わった。
それは変える為が前提であり、すでに変わっているということがどうしても理解できない。
「紫衣が水害で流された時に歴史はすでに動いていたんだ。」
紫衣は水害で命を落とすはずじゃなかったんだよと続けられる言葉を聞いて頭が割れんばかりに痛み出した。
ズキズキと痛む頭に自然と顔が歪む。
「辛い?辛いだろうけど、大事なことだから最後まで聞いて欲しい」
普段必ずと言えるほど私を優先してくれる優しい佐和さんが、話を進めようするということで、この話がとても重要だということは理解できる。
「大丈夫です。続けて下さい」
何より私が話を聞きたいと思う気持ちが抑えられない。
痛みを堪えながら佐和さんの瞳を見つめた。
そして、話をしてくれた佐和さん。
全てを聞き終わった私の気持ちは複雑だった。
私の表情を見てくすりと笑いながら佐和さんが言った。
「わかるよ。俺もこの話を三成に聞かされた時は、多分今の紫衣と同じ表情をしていただろうな」
聞かなければ良かったとは言えないけれど、知りたくなかったと思う事実。
けれど、どこまでも私達は繋がり続けていたのだと安心できる事実でもあった。
「ただ、おもしろくはないだろう?」
「はい、確かに少し癪に触りますね」
「そう思うのが普通だよな?ましてや、あの嶋田の…」
「はい、やられた感が拭えません」
「こうなるために計算されていたって事だからな」
「そうですね」