勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
歴史的にも策士と呼ばれる三成の側近、島左近。
三成は彼が使えた最後の君主、その不器用で、けれど誠実で優しい人柄にとても好感を持っていた。
最後の時を迎えても君主の事が気掛かりで、その魂は強い執着を残したまま本来行くべき場所へ行けなかった。
「で、その生まれ変わりが本人も恐らく気付いてないだろうけど、嶋田らしい」
「らしい?」
「素直に認める気にならないからね」
おもしろくないと零した佐和さんの言葉を思い出してほんの少し重かった心が晴れた気がした。
「嶋田を見てると全く想像出来ないけど、左近という男はかなりの切れ者で、先を読む力にも長けていたと言われている」
「はい」
「水害の話をしても大丈夫か?」
本当は思い出すと未だに体が震えるほど怖い。
だけど、その話をしなければ先へ進めないと思うから覚悟を決めた。
「はい、大丈夫です」
「本当は辛いと解っている話をするべきじゃないと思うけど…」
申し訳なさげに眉をハの字に下げる佐和さん。
「気にしないで下さい。話を進めるために必要だということは理解できています」
私を気遣って躊躇して話を進められずにいる佐和さんの負担を減らせればと思って、私は静かに微笑んだ。
「入れ替わりを計画し、実行するために全ては左近の思惑通りに事は進んだんだ」
「思惑通り?」
「そう…。紫衣と三成の出逢いを早めたんだ」