勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
神出鬼没の椿さん。
彼は私の後ろにいてニッコリと微笑んでいた。
「椿さん、驚かせないで下さい。」
振り返って話しかける私に椿さんは涼しい顔で笑っている。
椿さんは本当にいつ現れるかわからない人で、私は何度も突然現れる彼に驚かされている。
「紫衣様はいつも期待通りの反応をして下さいます。」
満足そうに笑う椿さんに、
「だけど、椿さんも一緒に帰ってしまうんですよね。」
寂しいってつい口にしてしまう。
困らせるだけだってわかっているのに止められなかった。
「私は城と大阪との連絡をとる役目があります。紫衣様を驚かせる事も度々あるかと思いますよ。」
「驚かされるのは楽しくないよ。」
「私が楽しいのです。」
「椿さんって不思議な人ね。」
真面目すぎる桔梗さんと口の悪い紅葉さん。
椿さんは桔梗さんほど堅苦しくはなく、紅葉さん程くだけてもいない。
「二人が極端に違いすぎるから私が普通に感じませんか?」
「感じたよ。
だけど、いつも私を驚かせて笑ってる椿さんは紅葉さんに近い気がする。」
「紫衣様、紅葉も桔梗も紫衣様を大切に思っています。
もちろん私も。」
会話が突然真面目なものになって私は戸惑った。
「うん。とても大切にしてもらってる。」
「でしたら、これをお飲み下さい。」
「え?」
ニンマリと笑う椿さん。
彼の差し出された掌の上には小さな紙がのせられている。
薬だって見てすぐにわかったけど、
「何?」
惚けて首を傾げてみせた。