勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
急に体に力をいれなければ痛みは感じないはず。
一度目はベッドの上で立ち上がることが出来たのだから大丈夫。
気をつければ痛みを感じることはないはず。
ゆっくりしていられないけど、佐和さんの心配そうな表情を見たくないから慎重に体を動かせば大丈夫。
それに無理なんてしてない。
芽衣ちゃん達と一緒に行動したいって心から思うの。
「佐和さん、無理なんてしません。無理なんてしていないんです」
だから佐和さんに気持ちを伝えたくて言葉を放つ。
「気持ちは解るけれど、少し休んだ方がいいんだ。紫衣が思うより昨夜は無理をさせてしまった」
少しは俺の気持ちも汲んで欲しいと眉を下げて言葉にする佐和さん。
すごく心配してくれていると伝わってくる。
「でも…芽衣ちゃんと嶋田さんが……」
言い終わる前に私の言葉は電話の着信音に遮られた。
芽衣ちゃん専用で指定してある着信音が部屋に響く。
中断した話をそのままに私は慌てて通話ボタンを押して携帯を耳に当てた。
「もしもし…」
芽衣ちゃんは私に一方的に話しかけてくる。
芽衣ちゃんの途切れることのない言葉に私は相槌さえ打てずにただ耳を傾けるだけで
『わかったわね!』
最後に念を押すように話す芽衣ちゃんに私が
「はい…」
と返事をすると電話は終話音を響かせた。
有無を言わせない勢いの芽衣ちゃんの言葉が途切れ、終話音の鳴る携帯を私は耳から離せなかった。
正に呆気に取られて呆けている状態で。
けれど佐和さんのクツクツと喉を鳴らすような笑い声が耳に入ってきて、止まっていた時間が動き出すような感じがした。