勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
ふわりと風になびく髪。
赤く染まった頬。
潤んだ瞳。
図書館に隣接された公園内に設置されたベンチは私の指定席。
そこで私はいつも現実を離れた遠い昔の人物に想いを馳せる。
大好きな大好きな歴史の中の彼。
想像を巡らせて幸せな気持ちになっていた。
本を夢中で読む私に近づく足音にも気を取られることなく集中してしまうことも日常茶飯事で
「いい加減気付いてくれないかな?」
冷たい掌が頬に触れて、やっと現実の世界に戻った私の瞳に映るのは
「良君」
そう、妄想癖のある私と根気良く向かい合ってくれる大切な人。
隣に座った彼に引き寄せられ肩に頬を寄せるようにもたれかかる時には、遠い世界のあの人を想うときと同じくらい頬に熱が集まる。
現実に存在する大切な彼と本の中の彼。
よくどちらが好きかと聞かれたけれど、気持ちを計る事なんて出来なくて
「どっちも」
そう応えると
「仕方ないな」って唇を尖らせながらも笑ってくれた彼。
そんな彼にくしゃくしゃと髪を乱されながら頭を撫でられるのが好きだった。
ぎゅうっと抱きしめられたら安心した。
彼のはにかんだ笑顔がまぶしかった。
「良君」
彼の腕に包まれながら顔を上げる私。
「紫衣」
頬を寄せていた胸に手を置いて彼を見上げるように視線を向けると
「え…? 清正さん?」
ニヤリと笑う清正が瞳に飛び込んできた。
「なんで?……えっ……うそっ!!」