勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「だけど清正様は三成様を避けているように見えました。
その清正様がこの屋敷に来たがるなんて…。」
正則もまた一緒なのだろうか…。
宴はお酒も出さなきゃならない。
また三成が嫌な思いをするんじゃないだろうか。
「清正様の興味は殿自身ではありません。
紫衣様です。
重家様誕生のお祝いというのは口実。
彼は紫衣様に逢いたいのでしょう。」
顔を歪ませて話す椿さん。
だけど私に逢いにくるなんて、
「どうして?」
不思議でならない。
「それは私にも解りかねますが、多分殿下が興味を示されたのが原因ではないかと…。」
秀吉が?
「殿下も紫衣様を城に連れてくるよう殿に話をされていました。
それを聞きつけたのではないかと思います。」
確かに秀吉を避けるために早く懐妊する必要があるって左近さんに言われていた。
そして運良く私は重家を身ごもり母になった。
それなのにまだ何かあるの?
どうして城に行かなきゃいけないの?
城に呼ばれなきゃいけないの?
意味がわからないと椿さんに尋ねようと口を開く前に静かに襖が開いて、
「椿の説明じゃ阿呆紫衣にはわからないよ。」
紅葉さんが部屋に入ってきた。
「紅葉さん、どうしたの?今日は三成と一緒じゃなかったの?」
「帰ってきた。」
紅葉さんは驚く私の前に静かに座ると重家に視線を向けて人差し指を唇の前に立てた。
「どうして?」
「ちょっと声落としなよ。重家様がびっくりするだろう。」
「あ…、ごめんなさい。」
見ると重家は今にも泣き出しそうに唇をへの字に曲げていて手をギュッと握り込んでばたつかせていた。
「お前ほんとに母親なのかよ。」
溜め息混じりの紅葉さんの言葉に重家を抱いてあやしながら肩を落とすしかなかった。