勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
それからは重家は朱里さんにお世話をしてもらい、私は紅葉さんと椿さんの話をじっくりと聞くことにした。
「では、わかって頂けましたね。」
「はい。」
ニッコリ笑顔の椿さんの掌には薬がのせられていて、
「飲んで寝ろ。」
白湯の入った湯のみを紅葉さんに渡された。
母になっただけでは何も変わらなかった事を悔やむより、どうやって今の状況を変えるのかが問題で、
「まずは元気に以前の私に戻らなきゃいけないんだよね。」
苦い薬を飲んでから二人に声を掛けた。
「そうですよ。紫衣様。私も微力ながらそばについております。
頑張って下さい。」
微笑んで頼もしい言葉を掛けてくれる椿さん。
でも…。
「椿さん、ゆきさんと帰っちゃうんじゃないの?」
「言ったではありませんか、城とここを行き来すると…。
それに薬の事は桔梗も心得がありますゆえ心配はいりません。」
薬はやっぱり今日だけじゃないんだ…。
「そんな嫌そうな顔するな。子供みたいだな。」
私の気持ちを悟ったように紅葉さんは溜め息を落としながら話しかけてくる。
私は紅葉さんを見ながら深い溜め息をついた。
「飲んだからご褒美だ。」
だけど紅葉さんは懐から取り出したものを私の目の前に差し出して笑った。
可愛い紙に包まれた花饅頭。
「懐かしい。」
朱里さんと紅葉さんとよく一緒に食べた花饅頭。
「食ったら寝ろ!」
目を輝かせる私を鬱陶しいと言わんばかりに一喝した紅葉さん。
言われなくても瞼は重く、
「お饅頭…。」
手を伸ばしながら私は深い眠りに落ちた。
「おやすみなさい。紫衣様。」
「早すぎるだろ…。」
椿さんと紅葉さんのくすくすという笑い声を聞きながら…。