勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
「秀吉ってひどい人だね。」
「どうしてさ。」
「だって側室が300人とかありえないよ!」
「昔のお殿様ってそんなものじゃないのか?」
「三成は側室は持ってないよ。
そういうところも好き!」
「また三成かよ…。」
私の言葉にうんざりとした様子で言葉を落とすのは良君。
図書館の近くの公園のベンチに二人並んで本を読んでる私と良君。
「家柄のいい美人さんを側室にするだけじゃ満足できなくて家臣の奥さんまで狙ってたって書いてあるもん。」
「へぇー、それで?」
「細川ガラシャって知ってる?」
「光秀の娘だろ?」
そう、ガラシャは本能寺の変をおこした明智光秀の娘。
細川忠興に嫁いだ。
でも光秀が倒れた後、謀反人の娘ということで夫の忠興と引き離されて幽閉されたんだ。
それを助けたのが秀吉で…。
「秀吉ってひどいばっかじゃないじゃん。」
「だけどね、ガラシャも狙ってたんだよ。」
「美人だって有名じゃん。」
「そうだね。キリシタンで、どの本にもとっても綺麗な人って書かれてるね。」
だから忠興は戦場からガラシャに宛てて秀吉に気をつけろと文を出している。
それに有名なエピソードがあるんだ。
「ガラシャはね。
秀吉と謁見したときに小刀をわざと落として見せてるんだよ。」
「なんで?」
「秀吉のものになるくらいなら死んで見せますって強い意志があることを示したんだって。」
「怖ぇ…。」
「今の時代なら考えられないね。」
「もしも俺と紫衣が秀吉の時代に生きていたら、紫衣はどうする?
ガラシャみたいに抵抗する?」
「当然だよ!」
「ま、俺も紫衣を誰にも渡さないって思ってるけどね。」
肩を抱き寄せられて良君にもたれ掛かる私。
笑い合って、たくさん話をして楽しかった良君との時間。