勝利の女神になりたいのッ!~第2部~
三成の存在は私の中ですっかりと消えていて、頭の中は重家の世話のことですぐに埋め尽くされた。
重家を抱いたまま立ち上がる私の前に朱里さんが笑顔で立っている。
「重家様のお世話は私がいたします。」
「え?…あの…。」
私が声を掛けたときには重家は私の腕からは離れて朱里さんの腕の中に抱かれていた。
そして朱里さんは私に背中を向けたまま、
「殿の嫉妬の業火で重家様が火傷をする前に退散しなければ…。」
ポツリと小さく呟いて屋敷に足を進めた。
小さくてもはっきりと聞こえた朱里さんの声。
嫉妬の業火って?
まさかね?
三成に視線を向けると彼は顔を赤く染めていて、私と目が合うとふいっと顔ごと逸らしてしまう。
「三成様?」
「………。」
もしかして…
でも、まさかね?
重家を愛おしむ三成が重家に嫉妬?
「もしかして…」
恐る恐る彼を見つめ、口を開くと、
「何も言うな!」
三成は耳まで真っ赤にしてぴしゃりと言い放った。
けど、頬が緩む私。
三成も同じなの?
私と同じ気持ちでいてくれたの?
俯き顔を背ける三成の腕にそっと触れる。
掌に感じる三成のぬくもり。
ずっとこんな風に触れたかった。
そんな思いが胸の中で広がった。